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【驚愕の真相】福岡「殺人教師」事件『でっちあげ』【事件の経緯から本の感想まで】

今回は、「でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相―」(著者・福田ますみ)を紹介していきたいと思います。

第6回新潮ドキュメント賞受賞した衝撃のノンフィクション。

フィクションのようなどんでん返しの連続。

“最悪なでっちあげ”とはなにか?

 

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「史上最悪の殺人教師」

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2003年6月。

とある新聞に「小4児童、教諭からいじめ」という見出しの記事が掲載。

同年10月。

ある週刊誌の見出しでは、

「『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した『殺人教師』」。

「史上最悪の殺人教師」とは、どんな悪行をした教師だろうか。

穢れた血

家庭訪問の際、担任を受け持っていた男児の曽祖父がアメリカ人であることを聞いた教諭が、

「血が穢れている」

「日本は島国で純粋な血だったのに、外国人が増えてきて穢れた血が混ざってきた」

などの人種差別発言を3時間まくし立てた。

5つの刑

家庭訪問の翌日から、10数える間に帰りの準備が出来なければ、

「ミッキーマウス(両耳を強く掴んで持ち上げる)」

「ピノキオ(鼻をつまんで強い力で振り回す)」などの「5つの刑」の中から男児に選ばせ、罰を実行した。

そして、男児は鼻血を出したり、耳を切るなどの怪我をした。

自殺未遂

男児に、「生きている価値がない。早く死ね。自分で死ね」と脅し、

男児がマンションから投身自殺を行う。

PTSD

男児は、教諭によるひどい暴力、暴言を受けた結果、重度のPTSDと診断される。

体の震え、嘔吐、腹痛などの症状が止まらなくなり、精神病棟に入院することとなった。

男の罪状は?

多くのマスコミにも注目される中、法廷で、「史上最悪の殺人教師」に正義の鉄槌が下される、

はずだった。

その鉄槌は下されなかった。

なぜか?

それは、上記に述べた数々の証言が、嘘だったからである。

普通の教師だったはずが…

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地獄の家庭訪問

男性教諭(ここではAとする)は、福岡県の小学4年生の担任を任された。

Aは、2003年5月に、ある男児(ここではBとする)の家庭訪問をした。

Bは、他の児童に対して暴力をふるったり、帰りの準備を全くしなかったり、机の周りを散らかしたりと、いろいろと問題があった。

1年生の時には、ハサミで女の子を傷つけたりもした。

~家庭訪問中~

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Bの母親「私は、通訳や翻訳の仕事をしているんです。私の祖父がアメリカ人で、私も小さい頃住んでいたんです。」

A「だからですね。アメリカの方と血が混ざっているから、Bくんはハーフ的な顔立ちをしているんですね。」

Aは、Bの話や何気ない世間話をした。

もちろん、Bの批判的な話は一切していない。

家庭訪問の時間も一時間を超え、Aがそろそろ帰ろうとしても、Bの母親は話を続けた。

Bの母親は、自分のアルファベットの発音を聞かせてきたり、

「アメリカと比べて、日本はここがダメだ」という話をしてきた。

Aはやっと解放されたが、3週間後、事件は動き始めた。

身に覚えのない体罰

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Bの両親が、学校に抗議をしに来たのだ。

Aから、家庭訪問の時に「穢れた血」などの差別発言を受け、家庭訪問の翌日からBに対して「5つの刑」などの体罰が行われていると校長に訴えたのだ。

もちろんAは、「穢れた血」と言った覚えもなく、体罰も行っていなかったが、

校長は、Aに謝罪をするように要求した。

Aは、一度、Bを叩いたことがある。

Bが、他の児童に対し暴力をふるっており、口頭で注意してもやめなかった為、Bのほほを右手の甲で軽く叩いたのだ。

もちろん、怪我をするほどではない。

叩いたのは、その一度だけであった。

差別発言や体罰は、身に覚えのないことばかりであったが、校長の威圧的な態度と、Bの両親の収まらない怒りによって謝罪してしまう。

しかし、Bの両親は「体罰は続いている」と度々抗議にきた。

Bに叱ったり、怒ることもしていなかったAだったが、

校長は「Aが悪い」と決めつけ、Bの両親の激しい怒りもあって、「謝って済むのなら」と

「体罰を通り越して、いじめていました」と謝罪してしまう。

そして6月。ある新聞社がこの事件を報道。

8月には、教育委員会がAに対し、停職6か月の懲戒処分を行った。

「停職6か月」とは、免職に次ぐ重い処分で、ほぼ「辞めろ」と言われているのに等しかった。

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停職中にもBや、両親は

「先生は僕のランドセルを笑いながら捨てた。『アメリカ人は頭が悪い』と言われた。」

「息子は血が汚れていると思い込まされ、マンションから飛び降りようとした。絶対に許せない」

と発言。

そして、「息子がPTSDになった」とAと福岡市に対し、民事訴訟を起こそうとしていた。

マスコミからの攻撃

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新聞や週刊誌で、Aは「殺人教師」として極悪非道の犯人のような扱いをされた。

ある週刊誌では、Aの実名も書かれていた。

そして、Bの話以外にも…

Aが2.3年前からダイエット食品などを扱う『ネットワークビジネス』を始め、保護者達に勧めていて、それがネズミ講まがいなものだと書かれていた。

脅迫まがいな勧誘をしたり、セミナーの司会までもやっているという。

しかし実際は、

Aがある保護者から、ハーバーライフ(健康補助食品の専門メーカー)をしつこく勧められ、購入し、100キロあった体重を27キロ近く減量し、ダイエットに成功した。

そして、信頼できる製品だと確信した妻が、仕入れて販売する仕事を始めた。

自分から保護者に勧めたことはないが、かなり痩せたので、

保護者から「どうやって痩せたの」かと尋ねられることが多くなり、それに答えていただけだった。

どんなことでも、真実を捻じ曲げられて書かれていた。

事件の過熱

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実名報道のせいで、脅迫状や嫌がらせの電話が相次いだ。

Aの妻は、インターホンや電話が鳴る度に怯えていた。

中学生の息子の担任には、事の次第を詳しく説明し、いじめを受けることのないように配慮して欲しいと頼み込んだ。

息子からは、「お父さんは試練を受けているんだね。がんばって」と励まされた。

Aは、家族のためにも戦うことを誓った。

10月。

Bとその両親は、BのPTSDを理由に、福岡市と教諭を相手取って、

1300万円の損害賠償の支払いを求める民事訴訟を起こした。

原告側の弁護団は、550人も及んだ。

Aの代理人を引き受けてくれる弁護士はなかなか現れなかったが、

強い味方となってくれる2人の弁護士を見つけることができた。

嘘でかためられた家族

初めは、圧倒的に不利な状況であったAだったが、裁判が進むにつれ、Bやその両親にまつわる“嘘”が、どんどん露呈しいった。

その嘘を、3つほど挙げてみる。

偽りの怪我

Bの母親は、Bが体罰を受けたことによって、

「鼻血を出したり、耳を切るなどの怪我をした」と証言していた。

しかしBが、体罰の怪我で保健室を利用したことも、怪我の診断書もなかったのだ。

アメリカの血

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Bの母親は、以前から他の保護者達に、

「自分はアメリカからの帰国子女で、初めは日本語が分からなくなって困った」

「祖父がアメリカ人で、昔はハワイに住んでいた」

「アメリカの大学在学中に、留学していた主人と知り合い、学生結婚した」

と自慢げに話していた。

しかし、これだけアメリカを意識し、アメリカの血が流れていることにプライドを持っていたというのにも関わらず、

なんと、アメリカの血は流れていなかったのである!

具体例をあげてみる。

【嘘①】Bの母親の父がアメリカ人。母は日本人だが、フロリダ在住で英語しか話せない

【真実①】アメリカの血縁者はいない。母も日本にいて、日本語しか話すことはできない。

【嘘②】

Bの母親はアメリカ生まれ。

アメリカの大学在学中に、日本から留学していた(のちの)夫に出会い、学生結婚した。

長男を出産するまで、ずっとアメリカにいた。

【真実②】

Bの母親は日本生まれ。

夫とは日本で出会った。一回離婚しており、長男は前夫の子ども。

幼い頃に何度かアメリカに行ったことがあるが、

生まれてから39年間、今までずっと日本で暮らしている。

アメリカで育っただの、ハワイに住んでいただの、アメリカの血が流れているというのは、全て嘘だったのだ!

全ての問題の根底がひっくり返る話である。

Bの母親が純日本人であれば、「アメリカの血が流れている。自分は穢れた血」だと苦しんでいるBは、苦しまなくていいのだ。

しかも、息子が悩んでいるのなら、母親は真実を告げて、苦しみから解放すべきなのだ。

可哀想な被害者親子の仮面が、どんどん剝がれ落ちていった。

 でっちあげのPTSD

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Bの主治医であるM医師は、Bが重度のPTSDだと診断。

「体の震え、嘔吐、腹痛などの症状が止まらなくなる。

自殺願望も見受けられるため、精神病棟に入院することになった」と証言した。

しかし、Aの代理人弁護士が、Bの入院した精神病棟のカルテを読むと、

入院から3日後には早くも外泊が決まり、合計186日の入院期間中、なんと106日が外泊だったのだ。

「重症のPTSDで、自殺願望さえある」という診断なのに、どうなっているのだろうか。

何のための入院なのか。

また、病院で、BのPTSDの症状は、まるで出ていないのだ。

PTSDとは別の問題が出ており、

他患者や病院スタッフへの暴言や問題行動が起きていた。

例えば…

  •  他患者の物を隠しても、事実を認めない。
  •  問題行動を注意した病院スタッフに対し、「おまえ、気持ち悪い」「メガネババア」「クソババア」「うるせえ!」との暴言を吐く
  •  薬と水を持ってきたスタッフに、「紙コップ!」と命令し、紙コップを持ってくると、「飲まん!」と言い、

その後「飲むと言ったろうが、耳悪いのか。意味わからん」と睨みつける。

紙コップに水を入れて渡すと、「勝手にやるな」と床へ薬を放り投げる。

  •  ライターで紙を燃やして遊ぶ
  •  消灯後に大声で歌う

など、数多くの問題行動を起こし、患者からの苦情も頻繁にきていたという。

しかも、入院中もBは、以前と同じように、小学校でのサッカー練習を欠かさず来ていた。

サッカーをしている時のBは、以前と変わらず元気いっぱいで、

保護者の間でも、BのPTSDが疑問視されていたのだ。

福岡市「教師によるいじめ」事件、終着

裁判が進行するにつれ、M医師の診断のずさんさやBの母親の話の信憑性のなさばかりが浮き彫りになった。

そして、2007年3月。

Bとその両親は、Aに対する控訴を取り下げた。

福岡市への控訴は取り下げず、市は賠償金330万を支払うこととなった。

2013年1月には、市の人事委員会が、Aに対する懲戒処分をすべて取り消す旨の裁決を下した。

事件から、10年もの月日が経っていた。

事件の発端

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普通の教師だったAは、なぜこんなことに巻き込まれたのだろうか。

Aの代理人弁護士はこう推測する。

『Bは、普段から頻繁に忘れ物をしており、母親から手の甲に、

マジックで大きく【えんぴつ・消しゴム】と書き込まれた。

そして、「これで忘れたら、次は顔に書くよ」と厳しく念を押された。

ところが、Bはまた忘れ物をし、母親から、忘れ物があるか確認された時に泣いてしまったのだ。

そして、泣きながらAからの体罰を言い出した。

「顔にマジックで【えんぴつ・消しゴム】と書かれたまま、小学校に行かなきゃいけない」

と追い込まれたBが、

Aに責任転嫁する嘘をついたとしても、不思議はない。

Bのとっさの言い訳を真実と思い込んだ母親が、思い込みと妄想を爆発させて、今回の事件が起きてしまった。』

でっちあげ

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「日本は島国で純粋な血だったのに、外国人が増えてきて穢れた血が混ざってきた」

「5つの刑」を毎日繰り返し行い、他の児童の前で、Bは大量の鼻血を出したり、耳が切れて化膿するなどした。

「穢れた血を恨め」と暴言を吐き、クラス全員でのゲーム中にも、「アメリカ人やけん、鬼」などとひどい差別発言を繰り返していた。

「お前は生きる価値がない。早く死ね」などと「自殺強要発言」。

こんな酷い嘘を、よくつけるものである。

もちろん、こんなことをAはしていなかったし、

他の児童や保護者達も、

「A先生は、体罰やいじめなんてやっていない。無実です。テレビや週刊誌は嘘を言っている」

と話していた。

しかし、Bの横暴さや母親のクレーマー気質は有名であり、

保護者達は「面倒なことには巻き込まれたくない」と大きな声では言えなかったのだ。

この事件は、Bの小さな嘘から始まり、そこへBの母親の嘘も加わり、テレビや週刊誌、新聞の嘘の情報が足され、風船のようにどんどん膨らんでいった。

話の中心であるAは、普通の教師だった。

生徒や教師という仕事が大好きな一人の人間だ。

その一人の人間を、周りは「史上最悪の殺人教師」とでっちあげた。

その人生をめちゃくちゃにしたのだ。

Aは、教職に復帰した。

こんな事件に巻き込まれて、普通なら、「こんな仕事はもうごめんだ」と思いそうだが、

復帰することをずっと夢見て、「自分の居場所はここしかない」と思ったそうだ。

この本では、Aの戦った軌跡と、B達のでっちあげの数々、発言の変化、裁判の様子などが克明に書かれている。

ぜひ、あなたも、この事件の真相を追ってみてください。

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